日本人の心に強く訴えるもののひとつに桜があります。


寒くて辛い冬が明けて春の訪れを告げる花。

一週間程度でその花びらをはらはらと散らす様。

薄桃色の花びらのそこはかとない美しさ。

花びらを散らしたあとに伸びる若葉は葉桜と呼ばれる。

薄い緑が全ての枝で広がっていく様も美しい。


そんな桜を春うららかな日に見るのはもちろん好きです。

でも桜にはもうひとつ静かな美しさがあります。



ある日テレビを見ていてある言葉を聞き驚きました。

「沖縄では桜前線は南下するんです。」


日本列島は沖縄を含め南北に長い島国です。

太平洋高気圧が勢力を強めると気候は暖かくなります。

ですから南の地域から桜が順に咲くのは当たり前。

でも沖縄では桜前線が南下する・・・・・。

今までの知識を総動員しても理解不能でした。


沖縄本島の地図を精査すると面白い事がわかりました。

北部には標高503メートルの与那覇岳を筆頭にして

標高数百メートルの山岳地帯が広がっています。

南部にはそのような高い山はなく平地が広がっています。

沖縄の冬の平均最低気温は8℃から10℃ですが、

標高が100メートル上がれば0.6℃低下しますから、

北部の山岳地域の平均最低気温は5℃~7℃になります。


桜は秋になり気温が下がると休眠期に入ります。

その後一定の低温にさらされている時期に

ゆっくりと開花する準備を始めると言われ、

8℃以下で500時間以上さらされることが必要なのです。


沖縄北部では桜の生育に必要な低温期があるため、

その地域の桜は気温の上昇により敏感に反応し、

南部の地域よりも少し早く開花します。

だから「沖縄の桜前線は南下する」のです。



この冬の寒い時期に桜の木を眺めてみましょう。

毎日そのか細い枝を少しずつ伸ばしています。

まだ年も明けていないのにゆっくりと育っているのです。

極寒の1月2月にもその成長は続きます。

枝と枝の間から見える空がだんだんと少なくなり、

3月には芽吹き始めますからその空はほとんど見えなくなります。

そして3月下旬から4月にかけてあの花を咲かせるのです。


そんな美しい姿も静かに見せてくれる桜。

今年もゆっくりとその枝を伸ばしています。

成長するためにはやはり辛い時期が必要なのを教えてくれます。


私も今年はようやく大きく飛躍できそうです。

極寒の期間はかなり長かったですが・・・(笑)。